不動産市場の変化で見える査定方法

建売住宅を牽引したパワーピルダー

戸建て住宅は、注文住宅と建売住宅(分譲戸建て)に大別できる。近年の住宅市場では、注文住宅が減少傾向にある一方、首都圏を中心に建売住宅が増加傾向を示してきた。これは、建売住宅を大量に供給するパワーピルダーが台頭してきたことが大きい。

パワーピルダーとは低価格の建売住宅を大量に供給する住宅販売会社である。パワーピルダーは郊外を主戦場として、初めて住宅を取得する子どもを持つ若い夫婦などをターゲットに、土地100平方メートル程度の割安な住宅を数戸から数十戸単位で供給することで成長を遂げてきた。

間取りなど規格を統一し、プレカット材(設計図に従って工場であらかじめカットした木材)を多用したり、資材の一括仕入れ、工期短縮による資金の回転率向上を図ることなどにより、低コスト化を実現し、価格的には分譲マンションと競合する。

分譲マンションとそう変わらない値段で二戸建てを取得できるということで人気を博した。低価格だから品質が劣るということではなく、パワーピルダーの分譲する建売住宅の多くは、住宅性能評価を受けている。

パワーピルダーの主な企業としては、「飯田グループ」と呼ばれる一建設(東京)、東栄住宅(東京)、飯田産業(東京)、アーネストワン(東京)、タクトホーム(東京)が上位を占め、このほか、城南建設(神奈川)、アイダ設計(埼玉)、センチュリーホーム(茨城)などが知られている。

低価格かっ高品質の建売住宅は、団塊ジュニア(おおむね1970~74年生まれの世代)など若年層にも広く受け入れられ、パワ一ピルダ一が成長する大きな要因になった。

団塊ジュニア世代の持ち家志向は強く、例えば2005年時点の調査を見ると、「どちらかといえば持ち家」まで含めれば9割以上が持ち家志向となっており(長谷工ア一ベスト調べ)、パワ一ピルダ一にとっては重要な顧客となったことが推察できる。パワ一ピルダ一は、徹底したコスト管理によって建物価格のロ一コスト化を図ったが、土地の仕入れについては、建売住宅として確実に売れる立地にこだわってきた。

このため土地で利益を出すことは考慮せず、良い土地があれば担当者が即断即決で高値でも買い付け、競合他社との仕入れ競争に打ち勝ってきた。こうした買い付けの姿勢により、地元の不動産業者が入手した土地情報がいち早くパワlピルダlに伝えられるようにもなり、仕入れで有利な状況を確立するに至った。

不況からもいち早く脱却

こうして増加を続けてきた建売住宅であるが、07年以降は減少に転じた。当時の景気拡大の長期化に伴い、地価や資材価格が上がり、住宅価格が上昇したことが、需要に水を差したためである。

さらに、リーマン・ショック以降は、地価や資材価格が下落に転じたため、業者が用地を仕入れるには好都合となったものの、景気の落ち込みで雇用や所得に対する不安が高まったことから、引き続き建売住宅の供給は低迷した。

景気の悪化はパワーピルダーにとって大きな逆風となり業績悪化を招いたが、リーマン・ショック後は、高値で仕入れた土地に建てた住宅を大幅に値引きして販売し、早めに損切りして身軽になる戦略に舵を切ったことが奏功した。

損切りするとともに、不況により大幅に値下がりした土地の仕入れを行い、割安な建売住宅を販売することで、需要を掘り起こした。リーマン・ショック後は、価格面でパワーピルダーと競合するマンション業者は、多くの売れ残りを抱え、新規の開発に乗り出せなかったが、それを尻目にパワーピルダーは供給を増やし、それまでマンション購入を検討していた層に食い込むことに成功した。

こうしたすばやい戦略転換ができた背景には、パワ1ピルダーが土地の仕入れから販売して現金化するまで最速で416カ月という極めて速いビジネス展開を行っていることがある(分譲マンシヨンの場合は日カ月程度)。

回転が速いことから、地価下落局面において、結果として現に分譲している建売住宅の土地仕入れ価格がやや割高なものになったとしても、そのことで収益が圧迫されるリスクは少なくなる。

この点でパワーピルダーのビジネスモデルは、デフレ下で利益を出しやすい構造となっている。また、分議マンションは開発に多額の資金を要し、不況下で大量の在庫を抱える中、資金調達が困難になったのに対し、パワーピルダーはもともと事業資金が少なくて済む上、回転の速いビジネス展開によって上がってきた現金を仕入れに回すことで、借金を増やさずに済んだ。

こうした形で、不況下で業績が悪化した住宅業界で、パワーピルダーはいち早く回復を遂げた。しかし、景気が回復し地価が上昇に入る局面では、建売住宅の開発に時間がかかる大手ハウスメーカーも利益を出しやすい環境となる。こうした局面では、土地の仕入れについて競合が激しくなっていくことが予想される。

注文住宅の二極化

一方、戸建て住宅のうち注文住宅については、地方における新規の需要と、建て替え需要のウェートが大きい。持ち家の再建築率(前の持ち家を壊して同じ敷地に着工した持ち家の全体の住宅着工に占める割合)は全国で四%で、この数値は都市部で高くなっている。

都市部では建て替えの際、二世帯住宅にしたいとする希望が多い。また、敷地が広く、駅に近くて利便性が高いといった条件を満たす場合には、賃貸併用住宅に建て替えたいとする希望も少なくなく、保有土地の有効活用を考える人が多いことを示している。

このため、大手メーカーはこうした需要に応える商品企画を積極的に提案している。また、最近は、太陽光発電や家庭用燃料電池を搭載した商品が人気で、大手メーカーについては住宅価格が値崩れする状況にはなっていない。

しかし一方では、近年のパワーピルダーの台頭や、注文住宅の分野でもローコストを売り物にしたメーカーがシェアを拡大させたことに刺激されるように、大手メーカーでも団塊ジュニアやその下の世代である団塊ジュニアネクスト向けに、コンパクト化、規格化を図った低価格商品を投入する動きが出ている。このほか注文住宅ではネット販売によってコストを引き下げる動きもある。

注文住宅の営業は、住宅展示場のモデルハウスに潜在顧客を呼び込み、アンケートに答えてくれた人をターゲットに営業を展開するというのが一つの方法であるが、営業担当者の来訪や電話を煩わしく感じる人は少なくない。また、自分のペースでゆっくりと検討できないなどの不満も生じる。

インターネットによる販売でこうした不満を解消し、同時に、住宅建設コストを下げようという試みが広がっている。その草分けがエス・パイ・エル「ネット白すまい」であるが、このサイトでは550種類の間取りプランが用意され、そこから好きなものを選ぴ、オプションも含めた見積もりを積算できる。

この商品では営業担当者は自宅を訪問せず、Eメールでのやり取りや、必要に応じ相談会に赴くことになる。住宅展示場はないが、引き渡し前の家を見学する機会はある。検討した上、納得したら申込金(10万円)を支払って、詳細見積もりゃ敷地調査を依頼する。ネット販売では申し込みまでの手順をネットで済ませるということになる。

モデルハウスのコストや営業コストを節約でき、自由設計ではなく決められたプランから選ぶため、同程度の注文住宅より数百万円は安く、01年の開始時からこれまでに2000棟以上販売している。このほか、ミサワホーム、三井ホーム、パナホーム、アイフルホームなどもネット販売を行っている。こうした営業手法は、今後、一つのやり方として定着していくと考えられる。

このように注文住宅の分野でも、従来の発想を超えてコンパクト化や規格化、低価格化を図ったり、ネットの活用などを行うことにより価格破壊を進め、不況下において若年層などの需要を取り込もうとする動きが活発化しており、高級路線との二極化が進んでいる。

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