不動産業界の売却戦略

裾野の広い戸建て住宅開発業界

戸建て住宅業界の裾野は非常に広い。戸建て住宅を作る住宅メーカー、建設会社、工務盾のみならず、広義には、住宅用の建材・外装材、住宅設備機器、内装材などのメーカー、内装工事業者なども含まれる。本書では同業界を前者、すなわち住宅そのものを建設する住宅メーカー、建設会社、工務屈などを指すこととする。

戸建て住宅業界に所属する事業者の数については正確な統計は存在しない。ここでは、仮に建築業という枠組みでそのおおよその数を把握するとすれば、総務省の経済センサス(基幹統計調査)の2009年の基礎調査によると、建設業の事業所数は約問万3000社で、全産業に占める割合は9・7%、従業員数は432万人で同割合は6・9%となっている。

いずれもほかの産業との比較において、相対的にシェアが高い業種に分類される。しかし実数値自体はここ数年減少傾向にある。

参入障壁の低い市場分散型業界

あらためて業界の事業モデルや現状の市場環境を僻敵すると、その理由が見えてくる。第一に同業界は参入・退出コストが低く、規模の経済性効果を事受しにくい労働集約型のビジネスモデルであるという点が挙げられる。

たとえば、大手事業者がスケール・メリット(規模の効果)を生かして原価を抑えたとしても、営業担当者の人件費、展示会場の固定費、広告宣伝費などの販促費がかさむことから、地場の工務庖などと比較しても大きなコスト・メリットが出しにくい。

逆にいえば、それがゆえに業界内プレーヤーの数が過度に増え、各社の市場シェアはきわめて低くなる。実際、業界トップ企業の積水ハウスでさえその値は4%程度。典型的な市場分散型業界といえる。

戸建て住宅の新規着工は直近ピーク時の半分程度

一方で、近年の業界を取り巻く市場環境はきわめて厳しい。これまで見てきたように、マクロ環境レベルでは人口減少、少子化、世帯数の伸び率低下、分譲マンション市場の拡大、賃貸向け住居の品質向上などの理由により、戸建て住宅の開発戸数は減少している。

国土交通省の建築着工統計調査によれば、戸建て住宅(持ち家+分譲住宅における戸建て)のみの新設住宅着工戸数は1996年に直近のピークとなる年間河万戸を達成した以降は、一貫して下落傾向にあり、最新の2010年は約10万戸まで減少した。

直近の市場縮小の主な要因として、2007年に施行された改正建築基準法による建築確認申請手続きの厳格化に加え、金融危機の影響による個人消費の低迷などが挙げられる。また、2009年6月には長期優良住宅購入者に税制、融資などの面で優遇措置を与える「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行されたことを受け、今後買い替え需要も縮小する可能性が高い。不動産査定依頼は、机上(簡易)査定と訪問(詳細)査定を使い分けることも重要になってきます。

さらに中・長期的に見ても、住宅最大の購入者層である初代から却代の絶対数は減少傾向にあり、将来にわたって圏内市場が縮小していくことは避けられない状況にある。このように、これまで同業界のビジネスモデルの特質上、拡大し続けてきた事業者やそこで働く従業員数を支え続けてきた底堅い需要が、明らかに縮小し始めているのである。

当然、需要の停滞は供給側の企業の市場からの退出を促す。これが近年の同業界の事業者数、従業員数の減少の要因であると理解できるのである。

注文住宅市場と分譲住宅市場

さらに業界を深耕してみると、この戸建て住宅開発業は注文住宅と分譲住宅に大別される。企業単位で見れば、どちらかを専門に手がける企業もあれば、その両方を展開している企業、どちらかに優位性を持つ企業などさまざまだが、それぞれの事業モデルは大きく異なる。

注文住宅とはその名のとおり、顧客からの注文(受注)を受け、それから指定された土地に住宅を設計・建築する事業である。形態としては完全受注生産であることから、事業者は基本的に在庫リスクを抱えない。よって住宅業界の中では事業の収益性が比較的安定していることが特徴といえる。

また、注文住宅はカスタマイズ性が高く、事業者聞の価格面での比較が困難なことから、価格競争に陥りにくい。よってブランドイメージからくる信頼性や高付加価値なオプションが重視されやすい。代表的な企業としては、積水ハウス、大和ハウス工業、積水化学工業(セキスイハイム)、住友林業、ミサワホーム、三井ホームなどが挙げられる。

一方、分譲住宅開発は開発事業者が自ら取得した土地に住宅を建築し、土地と住宅を合わせて顧客に販売する事業のことをいう。建築を終えて購入者を募集することから、土地の調達から建物の販売までの期間、土地と建物を事業者が自社保有することになるため、バランスシート(貸借対照表)が拡大し、在庫リスクが高くなる構造となっている。
不動産売却先は大手がいいのか?地元の中小会社がいいのか?という問題も明らかになっている

代表的な企業としては一建設、アーネストワン、飯田産業、東栄住宅などの分譲専業事業者が挙げられる。これらの企業はパワービルダ!とも呼ばれ、分譲住宅および分譲マンションの建築に特化していることが特徴でもある。都心およびその近郊では、開発規模の小さい、いわゆる「ミニ開発」を行っている企業もまた、この市場の主たるプレーヤーである。

住宅地の開発の歴史は古く、わが国においては戦前期の沿線開発による新中間層向けの郊外住宅地が形成されるころまでさかのぼる。高度経済成長期には、大都市圏では既成市街地において低質な木造民営賃貸共同住宅(木賃住宅)地の密集地域のほかに、郊外に向けての住宅地のスプロール化(都市の無秩序な拡大)が進行。

スプロール化した地域には、低質で小規模な戸建て持ち家住宅地、比較的良質な公団住宅、大手民間業者による分譲マンション、戸建て住宅からなる郊外住宅地が形成され、その後、日本のニュータウンが建設されていった。

2000年代の宅地分譲開発市場を傭敵すると、住宅・都市整備公団(現都市再生機構)による住宅建設の郊外団地からの撤退や、大手デイベロッパー(開発業者)による事業の凍結、スケジュールの大幅な遅滞など、事業そのものの見直しが行われている一方、ミニ開発が比較的好調に売れている。

相続税対策による土地の譲渡や分割、大手企業の決算対策などによる寮や社宅用地の譲渡など1000平方メートル前後の土地が市場に出回っている。こうした小規模な用地をさらに狭小に分割し、建て売り住宅を建て販売している例は多い。このような「ミニ開発」は、買い手の視点から見ても、日本人特有の持ち家戸建て偏重主義の流れを受けて、小さくてもご国の城」を築きたいという都心で働くサラリーマンのニーズにマッチした形といえるだろう。しかし、一方でミニ開発は次のような問題を内包している。

たとえば制度面においても、現行の都市計画法では市街化区域における面積1000平方メートル未満の土地の開発行為は、開発許可の対象とならない。よって、なかには居住面積の維持・拡大を目的に3階建てとしている住宅も多く、階段が急こう配であったり、聞取りゃ収納スペースが特殊な形状であったり、きわめて狭小であるなど、居住品質としては低い住宅が多いことも事実である。

それに加え隣棟間隔も狭く、相隣環境が悪化したり、防災上の危険性を有したりするケースも多い。そのほか、当該エリアにおける集中的な狭小住宅の拡大により、街の景観を損ねるケースも少なくない。このように、分譲住宅市場で活躍するプレーヤーには、注文住宅とは異なり、単にウワモノ(家)の品質やコストを注視するメーカー的視点のみならず、開発業者としての不動産的視点や、デイベロッパーとしての知識や経験が必要不可欠であることがわかる。

また、市場の動きを捉える上でも、注文住宅と分譲住宅では若干その動きが異なる。それは先の建築着工統計で見ても明らかだ。注文住宅に該当する持ち家の新設住宅着工戸数は長期的な低迷傾向にある。

新設住宅着工の釘・5%(2010年時点)を占める持ち家は1996年以降、10年聞の年平均成長率はマイナス5・7%で縮小。しかし、直近では市場の縮小は落ち着きを見せ比較的安定して推移している。

一方、新設住宅着工の斜・8%を占める分譲住宅は、1990年から堅調に市場を拡大させており、1996年以降叩年間の年平均成長率は0・8%。ただし、ここ数年で市場は下落に転じており、2007年から4年間で分譲住宅の新設着工戸数はおよそ3分の2の水準にまで縮小している。理由は前述のとおり、この時期に起こった法律の改正や施行の影響が大きい。そういう意味において同業界は建設業法をはじめ、多数の建築関連法令、業界規制の制約を大きく受ける業界でもある。

そのほか、商品性の違いという観点からも分類することができる。それは工法の違いとして「鉄骨系プレハブ」「木質系プレハブ」「ユニット系プレハブ」「ツー・パイ・フォー」「木造軸組」などに分類することができる。

各社、それぞれの工法を得意とする企業が、またその中でも競A品社との激しい競争を繰り広げているのである。部材を前もって包括’)工場で生産し、建築現場で組み立てる工法を総称して「プレハブ工法」と呼ぶ。その中でも、「鉄骨系プレハブ」とは、鉄骨系の材料で柱、梁などの主要な部分を組み立てるものを指す。特徴として、まず工場でパネルを生産することで精度や品質を高く保つことができるという点が挙げられる。

大工の腕に影響されがちな建築を、工場生産により品質を安定的に保つというメリットである。また、工場で生産してから現場で組み立てるため、現場の工期が短く1~2日で柱、外壁、屋根の主要部材が組み上がることも珍しくない。同様に「木質系プレハブ」とは、使用する部材が木質系であるものを指す。

「ユニット系プレハブ」とは、プレハブ工法の工場生産化率をさらに高めた工法であり、住宅の本体だけでなく、諸設備、建具、内装、配管、配線などを組み込んだユニット(部屋)を工場で生産し、現場でこれを合体させる手法を指す。加%以上が工場生産となるため、現場での工期がさらに短縮できるのが最大の特徴である。

「ツー・パイ・フォー工法」とは北米で生まれた工法で、床、壁、天井を「面(パネル)」で箱のような構造体をつくる。これらの「面」は、木材で組まれた枠組みに、構造用合板を貼ったものであり、枠材の断面寸法が2インチ×4インチであることから、「ツー・パイ・フォー(2×4)」という名称が付いた。

ただし、ツー・パイ・フォー以外にも、2インチ×6インチ材、2インチ×10インチ材を使うメーカーもある。この工法は「面」で構造体を支えるため、外部からの力が1カ所に集中せずバランスよく分散されて、地震や台風などの自然災害に強いという点に加え、気密性や断熱性にも優れているため、冷暖房に使うエネルギーコストを節約できるという点が、特徴として挙げられる。

「木造軸組工法」とは日本古来の伝統的な工法で、「在来工法」とも呼ばれる。コンクリートの基礎の上に土台を敷き、その上に柱や梁などをタテ軸、ヨコ軸として組み合わせて家の軸組みをつくり、さらに「筋交い」という斜めの軸材を用いて、地震などに対する建物の耐久性を高める手法である。

最近では、工場であらかじめプレカットした構造部材を使用することで、部材の均質化や省力化が図られている。この工法は、構造上の制約が比較的少ないので、形やデザイン、間取りなど設計の自由度が高く、また変形敷地などへの対応がしやすいことなどが特徴として挙げられる。

さらに、後で増改築がしやすいこともこの工法のメリットのーっとして挙げられる。住宅メーカー各社は、このような工法の違いを1つの商品差別化のファクターとして捉え、各社ともある程度得意な工法に集中する戦略、または工法の違いにもとづき商品ラインナップをある程度揃え、広いニーズに対応する全方位的な戦略のいずれかを選択し、熾烈な顧客獲得競争を繰り広げている。

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