移住志向で持ち家を売却するニーズが高まる

移住志向で持ち家を売却するニーズが高まる

シニア層の移住二ーズ

シニア層の聞では持ち家を離れ、都心部のマンションや田舎で暮らしたい、あるいは高齢者向け住宅・施設に住み替えたいとのニーズが徐々に強まってきている。

団塊世代を対象に行った調査では、今後凶年間で移住を希望する人は東京圏で26%、大阪圏で21%に達した。現実に移住に踏み切るかどうかはともかく、潜在的には移住のニーズが高いことを示している。

シニア層が今住んでいる持ち家から離れ、都心部のマンションや田舎暮らし(田園居住)、あるいは高齢者向け賃貸住宅や高齢者向け施設などに住み替えようという希望を持っている場合、持ち家をどのようにして処分あるいは活用するかという問題が発生する。

子どもがその後に住むということも考えられるが、現在では子どもは子どもで、マンションや一戸建てなど持ち家を保有している場合が少なくない。またいずれは子どもが引き継ぐにしろ、仕事の都合で今は住めないということもある。

こうした場合、売却するのは一つの手段であるが、資産を手放すことには抵抗がある場合も多いし、売却で差益が出れば課税されるかもしれないという問題もある。

しかしだからといって、空き家にしたままでは、家が荒れてしまう。このようなケースにおいては、持ち家を賃貸住宅として貸し出すのが有効な活用方法と考えられる。家賃収入が得られるし、期限を区切って貸し出せば(定期借家契約)、いずれ自分が戻ってきたり、子どもが住もうと思った場合にも柔軟に対処できる。

今後高齢化が一段と進展し、リタイア後の時間も長くなる中、多種多様な住み替え需要が高まっていくにつれ、住み替えの際に、現に住んでいる持ち家を売却せずに有効に活用したいとするニーズが高まってくると考えられる。

持ち家ストックを賃貸住宅として活用することは、現在の居住ニーズと居住実態とのミスマッチを解消することにもつながる。現在の住宅所有構造を見ると、40歳以上の単身および夫婦の持ち家世帯の54%が100平方メートル以上の広い住宅に住む一方、4人以上世帯の持ち家の29%が100平方メートル未満というミスマッチが生じている。

つまり、単身・夫婦の高齢者が1人ないし2人で住むには広すぎる家に住んでいるのに対し、ファミリー層は持ち家であっても狭い住宅で我慢しているということにほかならない。

賃貸住宅に居住するケースでは、広く家賃が手頃な物件は少ないため、さらに狭い住宅で我慢しているという現状がある。これに対し、高齢者の持つ広い持ち家が、ファミリー向けの賃貸住宅として貸し出されるようになれば、こうしたミスマッチ解消の一助にもなると考えられる。一方、高齢者にとってはこれまでは売却するか空き家にするかの選択肢しかなかったものが、持ち家を賃貸住宅として貸し出すという新たな選択肢が生まれる上、持ち家を収益資産として利用できるということになる。

貸し手と借り手のマッチング

こうしたミスマッチを少しでも解消するため、2006年に移住・住みかえ支援機構が設立され、シニア層(50歳以上)のマイホーム(一戸建て、分譲マンションなど)を借り上げ、主として子育て層に転貸するという仕組みが作られた。

家賃は相場より1~2割安く設定され、貸し手には家賃から運営費(15%)を差し引いた額が支払われ、空き家となった場合も一定の賃料を保証される。3年単位の定期借家契約であるため、貸し手はいずれ自分が戻ってくることも容易である。

ただし、この仕組みを利用するためには耐震強度の条件を満たすことが必要で、例えば貸し手と想定される団塊世代の持ち家は旧耐震基準(1981年以前)のものが少なくなく、その場合、補強を行う費用が貸し手にとって負担になるのがネックである。

制度開始からこれまでに200件ほどの成約があり、この仕組みの利用はまだ多いとはいえないが、次第に関心が高まりつつあり、今後の利用拡大が期待されている。

一部鉄道会社では、移住・住みかえ支援機構と提携し、沿線で開発した住宅の住み替えの円滑化を狙う動きもある。南海電鉄は、1960年代から開発した大規模なニュータウン(大阪府南部の大阪狭山市や河内長野市など)の高齢化が進み、空き家が目立ち始めていることに危機感を持ち、2010年1月から機構と提携し、物件の活用を進めることで沿線の活性化を狙っている。

関東では、多摩ニュータウン沿線の京王電鉄が提携して変わる住宅市場いる。このほか、移住・住みかえ支援機構は、将来的に賃貸化できる優良な住宅ストックを増やすため、新築住宅の購入希望者に対し、機構が認定するメーカーを紹介する試みを開始した。機構による「移住・住みかえ支援適合住宅制度」の認定を受けた企業の建築した住宅ならば、機構が住宅を借り上げる際、耐震性などの診断を省略できる、貸し手の年齢制限もなくなるなどのメリットがある。ただし、紹介するメーカーは、大手メーカーなど9杜(10年9月現在)に限られている。

空き家パンクの設立

一方、それまで住んでいた人が死去したり他に移ったりすることで、すでに空き家となってしまった住宅については、行政が「空き家パンク」などの仕組みを作ることで、新たな住人を呼び込もうとする動きがある。例えば山梨市の空き家パンクは、郊外の空き家が目立つ状態となった町年に設立された。空き家パンクでは、家主から物件登録の申し出があると、建物を検査した上ホームページなどで物件情報を公開する。物件の紹介を受ける場合は、山梨市への定住を希望していることなどを条件に、事前登録が必要となる。「空き家パンク」は、賃貸のみならず、売買の仲介も行っており、これまでに合わせて50件ほどの成約実績がある。こうした取り組みは全国各地で進められている。

持ち家リース事業の可能性

これまで述べてきたように、シニア層の持ち家の流動化は、公的な機関が主体になっているのが現状で、成約実績はこれまでのところ多いとはいえない。しかし今後については、さらに高齢化が進み、シニア層が持ち家を有効活用しようとするニーズがさらに顕在化していく一方、若年層で一軒家の賃貸を好む層が増えていけば、持ち家の賃貸化は「持ち家リース事業」として成り立っていく可能性もある。持ち家リース事業には、シニア層の住み替え先の支援(都心・田園居住、高齢者向け住宅など)から始まり、その後の持ち家の賃貸化に必要なリフォーム、入居者の確保、家賃徴収などの管理、メンテナンスなど関連する様々な業務が発生する。すでに、空き家となった一軒家をシェアハウスに転用する事業に関しては、こうした業務の一部を請け負う業者が出現している。第1章の住宅ストックの節でも述べたが、シェアハウスとは、独立した個室を持ちながら、リビングやキッチンなどを共有するタイプの賃貸住宅である。男女を含め見知らぬ人同士が入居するが、互いの交流を楽しめる点が、プライバシーよりはコミュニケーションを重視する若者にとって魅力となっている。シェアハウスは、古い社宅や独身寮、下宿などを改装して造られる場合が多いが、大きめの一軒家を改装して造る場合もある。一軒家の場合は、古い物件の特徴を前面に出した改装を行いやすく、社宅などを改装した物件と一味違うのが魅力となっている。

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